- "La pace sia con tutti voi. Fratelli e sorelle carissimi, quest e' il prima saluto del Cristo risorto,il buon pastore che ha dato la vita per il gregge di Dio"
みなさんと共に平和があるように。親愛なる兄弟姉妹よ。これは、復活したキリストの最初の挨拶です。キリストは神の信者達のために自分の人生を捧げた善い羊飼いでした。
「この言葉は、2025年5月8日に新しくローマ教皇に選ばれたレオ14世の最初の挨拶だよ。その前の教皇フランチェスコが2025年4月21日に亡くなったので、次の第267代の教皇としてコンクラーベで選出されたんだ。本名はロバート・フランシス・プレボスト(Robert Francis Prevost)と言って、アメリカ人だそうだ。」
「テレビでも新聞でも大きく扱われたけど、皆さんと共に平和があるように、という言葉は、今ロシアがウクライナを攻撃しているとか、イスラエルがガザ自治区の住民を虐殺しているとか、世界中に戦争があるから、レオ14世はこの様な戦争が早く終わって平和になることを祈るということだよね。」
「本当にそうだね。戦争のない平和な世界に戻って欲しいよね。でも復活したキリストのこの最初の挨拶はどういう意味なのかな?って,疑問に思わない?私達はキリスト教徒ではないから,分からないので調べて見たよ」
「へえ~、どういう意味なの?」
「ヨハネによる福音書第20章19項に書いてある。手元にある新約聖書を引用するね。
『その日、すなわち(イエスが処刑された後)一週の初めの日の夕方、弟子達はユダヤ人をおそれて自分たちのいる場所の戸をみな閉めていると,イエスが入ってきて,彼らの前に立ち”安かれ”と言われた。』とある。これはつまり、戸を締め切っていて誰も入れないはずの部屋に、すでに死んでしまったイエスがそこにいるので、みんな驚いていたんだね。みんな驚いてざわざわしていたんだと思うよ。だから、イエスは、『みんな、静かにして、落ち着いて、驚かないで』などという言葉を掛けたのじゃないかな。日本語訳でも『安かれ』と書いてるから、『皆さん、落ち着いて』という意味じゃないかと思うんだ。」
「つまり『平和と共にあれ』という訳は、戦争を辞めなさい、ということではなくて、少し違っているということだね?」
「確かにイエスが処刑された時代にも戦争はあったから、平和を願うということはあったと思うけど、聖書で書かれている言葉の意味とは違うよね。むしろ現代っぽいということかな」
「じゃ、Pace の訳が違ってたのかとも少し思ったけど、ヨハネの福音書はギリシャ語で書かれていて、イエスの時代のヘブライ語でもなかったし、古代ローマ帝国のときのラテン語でもなかったし、イタリア語でも、まして英語でもなかったから、翻訳は難しいね!」
「心配ないよ、レオ14世は英語はもちろん,スペイン語、イタリア語、フランス語、ポルトガル語、ラテン語など堪能だと聞いているから、元のヨハネの言葉の意味も十分に分かってのことなんだよ。実際、レオ14世は、このときの演説で、『これはキリストの平和であり、非武装の平和の一つであり、敵意をいだかせない,慎ましい、粘り強い平和の一つである』(Questa è la pace di Cristo, una pace disarmata, una pace disarmante, umile e perseverante.)と言っているので、戦争や闘いという言葉に対応する平和という概念を使っていると思う。きっと、戦争を止めて平和な世界に!という意味だろうと思うよ。だから、聖書の言葉もその時代に併せて理解することも必要なんだね、そういう柔軟性もあるんだね、きっと」
「なるほど。ちなみに、このイタリアのことわざ・名言46番には、同じヨハネの福音書20章17項にでてくる『私に触ってはいけない』を紹介しているね。」
「そうだね、今,宗教は大きな政治的な問題にもなっているから、私達は、きちんと理解することが必要かもね!」