1. Aangelitaa, ti saresti chiamata Angelita,
    Angelita, Angelitaa, volevamo chiamarti Angelita,

アンジェリータ、君はそう呼ばれたかもしれない
アンジェリータ、僕たちは君をそう呼びたかったよ

「この歌は、『アンジェリータ』という題で1965年、つまり昭和40年に日本の男性グループ、ダーク・ダックスによって日本語に訳され歌われて、ヒットした曲だよ。このグループは4人編成で高音から低音まで幅広い声が特徴で、かつ優しい歌声だったので、とても人気があったんだよ。」
「聞いたことがあるよ。歌詞は、『アンジェリータ、今も呼ぶよアンジェリータ、月だけが輝く夜のアンツィオ、我ら強者が敵前上陸、我らを迎える青い月の中に、貝殻を握りしめて泣いている女の子。アンジェリータ・・・』というね。
 でも、当時はアンツィオってまったく知らなかったし、戦争の歌らしいとは想像できたけど、女の子が死んでしまう歌詞なので、具体的なことは分からなかった。」
「そうだよね。実は、この歌は、イタリアのロス・マルチェロス・フェリアルというグループが歌っている。1962年に結成され、1964年に発表された。原題は『アンツィオのアンジェリータ(Angelita di Anzio)』という。歌詞の中のアンツィオというのは、ローマから南に約30キロ行った場所にある。
 この曲は、第2次大戦で連合軍がイタリアのアンツィオ上陸作戦を実施した時の歌だ。
 日本人なら、1940年9月に日本はドイツとイタリアとの3国で軍事同盟を結んで いたと歴史の勉強で習っているが、実は、イタリアは、1943年9月に連合国と休戦協定をして枢軸国から離脱したんだ。そこで、それ以降は連合国とドイツ軍との戦いになったんだね。ちなみに、1945年5月にドイツが降伏した後、7月、イタリアは大日本帝国に対して宣戦布告したんだ。あまり日本には知られていないけどね。
 この間の1944年1月に、連合軍がアンツィオの海岸で船から上陸し、ドイツ軍に対する攻撃を開始した。このとき、深夜までに3万8000人を超える連合軍の兵士が上陸し、ドイツ軍と交戦し、多くの死者がでたそうだ。上陸したアンツィオには米軍戦死者の墓地があるよ。
 この歌にあるように連合軍の兵士が上陸したとき、5歳くらいの少女を見つけて助けた。その後、彼女は赤十字に渡されたが、ドイツ軍との砲撃戦で少女は亡くなったという。
 1979年1月にアンツィオ市の浜辺にアンジェリータの銅像が立てられた。戦争の悲惨さ、特に罪のない子どもに対する戦争の残酷さを深く記憶に留めるために作られたということだ。」
「イタリア語の歌詞を紹介しておくね。
 Angelita, ti saresti chiamata Angelita.
 Angelita, Agelita, volevamo chiamarti Angelita, Angelita,
 Sbarcammo ad Anzio una notte, oh, oh,
 C'era soltanto la luna ed un pianto di bimba.
 In fondo al suo sguardo di mare, c'erano ancora le favole,
 e quattro conchiglie ripiene di sabbia, stringeva una piccola mano.
 Aangelita, ti saresti chiamata Angelita,Angelita.
 Entrammo in Anzio e fu l'alba, oh, oh.
 Con il fucile sul braccio, e la bimba con noi.
 Aveva i capelli di grano, ed una voce di passero.
 Le quattro conchiglie ripiene di sabbia, stringeva la piccola mano.
 Angelita, volevamo chiamarti Angelita,
 Che alba grigia su Anzio, oh oh.
 Scese improvviso fra noi, un silenzio di bimba.
 Da quel suo sguardo di mare, eran fuggite le favole,
 ma quattro conchiglie ripiene di sabbia restavano nella sua mano.
 Angelita, ti saresti chiamata Angelita,
 Angelita. Angelita, volevamo chiamarti Angelita, Angelita. 」
「この歌はなんとなく寂しい曲調で、しかも何度も何度も、アンジェリータと叫ぶから、聞いている私も、いつの間にか、すぐ側に可愛くて幼いアンジェリータがいて、そしていなくなってしまうという悲しさを覚えてしまうね。本当に心から戦争には反対だよ。」

  1. Bacco, tabacco e Venere riducono l'uomo in cenere.

酒とタバコといい女は男を破滅させる

「イタリアで酒と言ったら、ワインだと思うけど、ここではタバコと音韻を合わせるために、敢えて古語の Bacco を使ったんだね。Baccoは、ローマ神話ではワインの神様だからね。Venereは、ローマ神話でヴィーナス、ギリシャ神話でアフロディテのことだけど、一般的には美女をいうようになった。一般的に女性というのであれば、donna という単語でいいと思うけど、その後に出てくるcenereと音韻を合わせるために、Venere という単語にしたんだと思うよ。cenere は灰のことだけど、男を灰に変えるということは、男をダメにするという意味だね。」
「なるほど、つまり酒とタバコと女は、男の弱点で、これに溺れると身の破滅なんだ。でも、あの男は大酒飲みだし、タバコもたくさん吸うけど、女房がやたらと強いんで、なかなか破滅しないんだ。」
「え?誰のこと?」
「いや、いい女って、どんな女性をいうのかなあ、と思って・・・」

  1. “Il futuro del pianeta dipende dalla possibilità di dare a tutte le donne l’accesso all’
    istruzione e alla leadership. È alle donne, infatti, che spetta il compito più arduo, ma più
    costruttivo, di inventare e gestire la pace.”

地球の未来は、すべての女性に教育とリーダーシップへのアクセスを与えることにかかっています。実際に、平和を構想し、維持するという最も困難でかつ最も建設的な仕事は、女性にかかっているのです。

「この言葉は、リタ・レヴィ・モンタルチーニ(Rita Levi Montalcini)という女性の言葉だそうだ。1986年に生理学・医学の分野におけるノーベル賞を受賞した優れた人だ」
「女性で科学分野におけるノーベル賞を受賞したということは本当に素晴らしいね。」
「そうなんだけど、ノーベル賞は1901年に創設されたが、イタリア王国だった頃の1929年にグラツィア・デレッタというイタリア人女性が文学賞を受賞している。
 未だに日本では、女性の受賞者は、まったくいないから、本当に残念だ。」
「リタは、1909年4月に、イタリアのトリノの裕福なユダヤ人家庭で生まれた。父親は『学歴は妻や母親になるのは邪魔だ』という古い考えの持ち主で、彼女が進学することに反対したが、リタは、父親の反対を押し切りトリノ大学医学部に入り、組織学者ジュゼッペ・レーヴィの指導を受けて医学を学び、1936年に卒業した。
ところが、1938年にムッソリーニの人種政策によって、彼女はレーヴィと一緒にベルギーに移住し、研究を続けた。さらに1947年にはアメリカのセントルイス・ワシントン大学に招待され、神経生理学で神経成長因子(英語でnerve growth factor:NGF、イタリア語でfattore di crescita nervoso :FCN))の発見という重要な研究を行ったという。詳しいことは分からないけど、ニワトリの胚を移植したネズミに癌があることが分かり、活発な神経線維の成長をもたらしたことから、ニューロンの増殖を促進する物質と関係があることを見抜いたという。
 1986年にはノーベル賞の医学生理賞を受賞したが、その時の受賞理由は、『神経成長因子の発見はひとりの注意深い観察者が、どのようにして一見カオスの状態から有効な仮説を引き出すことができるかについての魅力的な例である』そうだ。」
「君の説明は専門的過ぎて、特に神経成長因子、と言う言葉が分からなかったよ、自分で調べると、『神経成長因子(NGF)は、神経軸策の伸長及び神経伝達物質の合成促進作用、神経細胞の維持作用、細胞損傷時の修復作用、脳神経の機能回復を促し老化を防止する作用等を持ち合わせた重要なタンパク質だ。特に、樹状突起の機能低下を防ぐ働きがアルツハイマー病や認知症の予防・治療に有効であると注目されている』と説明されていたね。認知症の予防に役に立つということだとすれば、これからも有益なものなんだね。」
「翌年にはアメリカの国家科学賞を受賞した。1992年にはリタ・レヴィ・モンタルチーニ財団を設立し、主にアフリカの貧困問題や女性に対する教育に力を入れたとされている。さらに2001年にはイタリアの終身上院議員に指名された。2012年12月に亡くなった。103歳だったが、歴史上、最も長生きしたノーベル賞受賞者と言われている。」
「素晴らしい研究者だし、社会的な貢献もしていたんだね。でも彼女は女性の科学者で、しかもユダヤ人だったから、とても苦労したと思うよ。」
「リタは、多くの本を書いたり、講演したりしているけど、いくつかの名言がある。
女性の権利や自由について彼女はいろいろ発言しているよ。
 «L'umanità è fatta di uomini e donne e deve essere rappresentata da entrambi i sessi.»
 これは、『人類は男性と女性で構成されてる、だから両性ともに代表されることが必要だ』ということだね。
 «un mondo vittoriano, nel quale dominava la figura maschile e la donna aveva poche possibilità»,
 これは『ヴィクトリア王朝の時代は、男性が世界を支配していて、女性は、なにもできなかった』という意味だね。
 彼女は、まだ、たくさん良いことを言っているので、いずれ紹介するよ」
「今まで、このコーナーでイタリアの女性を何人かみてきたけど,彼女達は本当に頑張って生きているね。日本人としては、うらやましい限りだ。」