近年、労働者における非正規雇用の割合が高くなったと言われているが、厚生労働省の発表によれば、平成28年おいては役員を除く雇用者全体の37.5%になった。人数としては、全労働者のうち正規雇用者数3355万人に対し、非正規雇用者数は2016万人だという。
 トヨタ自動車にもいわゆる非正規雇用労働者がおり、「期間工」と呼ばれている。昭和38年に「期間工」(季節労働者)として採用されるようになったという。
期間工は、トヨタ自動車に直接雇用されているが、その雇用形態は募集要項でみると次のようになっている。

 基本日給 9800円~10600円
 勤務時間 連続2交替勤務(1日7時間35分)
 基本となる勤務形態(1直、2直を1週間毎に交替)
  1直(5日)6:25~15:05
  2直(5日)16:00~0:40
   業務の都合により残業、休日出勤あり。
   他に、連続3交替勤務、常昼勤務あり。
 休日 原則週休2日制(土・日曜日)
 契約期間更新 初回契約 3ヶ月
  1回目 更新3ヶ月
  2回目~5回目更新 6ヶ月
  6回目更新 5ヶ月(連続2年11ヶ月)
 会社の判断基準
  ① 契約期間満了日以降の会社の生産見通し、その他業務量、
  ② 本人の勤務成績、勤務態度、能力、健康・体力
  ①と②を会社が総合的に考慮して更新が必要と判断した限り、契約を更新する場合があります。

 以上を分かりやすくすると、1ヶ月4週として20日働くことになるので、賃金は単純に日給1万円として計算すると月20万円である。ここから健康保険料、厚生年金、雇用保険、住民税、所得税など控除された場合、手取り額は幾らになるのだろうか。また契約更新は当然更新ではなく、その都度会社の判断に委ねられるので将来を見通すことができない。おそらく期間工でもQCサークル活動で成果を上げないと、勤務成績、勤務態度などに影響するので契約更新も難しいという実態があるのではないか。
 さらに契約が更新されても最長2年11ヶ月で止まる。独身者の場合には独身寮に入れば住居費は無料になるが、寮に入らない場合には月20万円では生活は楽ではないと思われる。しかも深夜勤務を含む2交替勤務であるから生活リズムが崩れ身体的精神的に疲労が蓄積することは容易に想像できる。
 結局、期間工とは、雇用期間の定めのある労働契約を締結している労働者であって、トヨタ自動車にとって「景気の調整弁」として使い捨ての労働者なのであろう。
 ところで政府は、非正規雇用と正規雇用の賃金等の待遇格差が世界的にみて格差が大きいことから、「同一労働同一賃金原則」から不合理な格差を是正するための努力をしようとしている。賃金格差の程度は厚労省の統計調査によれば平成28年においては、正社員の場合平均時給は1950円であるのに対し、正社員でない場合、平均時給は1299円とされている。特に正社員の場合勤続年数に従って賃金は増えるが、正社員でないと定年まで、ほぼ同じ時給となっているので、生涯賃金額は大きな格差が生じる。
 ではトヨタ自動車における賃金はどのようになっているか、であるが、ネット情報によれば、2017年3月現在の発表では、正社員の賞与も含めた平均年収は814万円となっており、年令別でみると、30歳代634万円~724万円、40歳代814万円~911万円、50歳代968万円~976万円という。さらに総合職、技術職、一般職との間には年収に大きな格差があり、総合職であれば年収1140万円、技術職797万円、一般職は814万円となっている。
 このような数字を見てみると、期間工の年収は240万円程度であり、仮に時間外残業や休日労働をしたとしても年収は多くても360万円程度であろうと推測することができる。そうしてみると、期間工とそうではない労働者の間には大きな賃金格差があると言わなければならない。
 トヨタ自動車における期間工の割合は不明であるが、2017年3月に発表された東洋経済オンラインでみると、トヨタ自動車の非正規労働者数は連結で8万6843人であり、連結での労働者数34万8877人に対して20%だったという。2016年の数字では、非正規労働者数は8万5778人、労働者数33万8875人だったから、人数としては増加していることになる。
 トヨタ自動車は期間工を正社員として登用する方針も打ち出してはいるが、現在のところ期間工の割合が大幅に減るという結果にはなっていないようである。