トヨタ自動車と言えば「男の会社」とつい思ってしまう。
 トヨタ自動車のサイトの役員の欄をみると、取締役・監査役、執行役員として約65人の役員がいるが、女性は監査役として1人いるだけであって、あとは全員男性である。
 いうまでもなく監査役は、企業の経営方針などに携わることはないから、経営陣のメンバーとは言い難いであろう。また執行役員というのは会社法上の取締役ではなく、従業員ではあるが役員待遇を受けて決定した重要事項を実行する責任者という意味である。にもかかわらず女性は執行役員にもなっていない。
 労働者関連のデータをみると、2015年(平成27年)においては、全労働者数7万2779人のうち女性はわずか8196人であり、残りの6万4583人は男性だった。労働者の女性割合は11%ということである。同年の採用状況についてみると、全採用者数2185人のうち、女性は215人であるのに対し、男性は1970人である。つまり女性の採用比率は9%である。なお、そのうち女性は主に事務職として採用されており、女性は42人、男性61人となっている。
 また同年の女性管理職の割合についてもトヨタ自動車は公表しているが、主任以上は3.7%、主幹以上が1.4%としている。ちなみに主幹とか主任というのは、専門職名で、下から「主任」、「主幹」「主査」「理事」と4つあり、これを管理職に当てはめると主任はグループ長相当、主幹は室長相当、主査は部長相当だそうである。「主査」の女性割合が記載されていないので、このことは主査の女性が不存在であることを意味していると思われる。なお「理事」という管理職が、従業員の最高職である執行役員を指すのかどうかも私には不明である。
 ところで政府は「男女共同参画基本計画における成果目標」という方針を掲げているが、2016年(平成28年)5月に発表された第4次目標のうち民間企業に関する目標は次のとおりだった。

 係長相当職 2020年(平成32年)までに25%
 課長相当職 2020年(平成32年)までに15%
 部長相当職 2020年(平成32年)までに10%
 上場企業役員に占める女性の割合
  2020年(平成32年)までに5%(早期)、更に10%

 このような政府の目標との比較において、トヨタ自動車では、具体的にどの管理職が該当するのか私には不明であるから、間違いを覚悟で単純に、係長相当職を「主任」、課長相当職を「主幹」、部長相当職を「主査」と当てはめてみた。
 すると、トヨタでは次のとおりになる。

 係長相当職=主任 2015年 3.7%(2020年目標25%)
 課長相当職=主幹 2015年 1.4%(2020年目標15%)
 部長相当職=主査 2015年 0% (2020年目標10%)
 上場企業役員に占める女性の割合
  2015年 0%(2020年目標5%)

 トヨタ自動車において女性の昇進・登用が政府の目標値に達するのは、いつのことになるのか、まったく予想することすらできない。
 ところで、トヨタ自動車では女性の役員や幹部は輩出されないのではないかと、私は内心思っている。
 実は2006年(平成18年)4月に愛知県三河湾にある蒲郡市に、海陽学園という中高一貫校が設立された。通常私立学校といえば高い教育理念のもった教育者が設立することが多いが、この学校はトヨタ自動車、東海旅客鉄道、中部電力など中部財界のトップの企業が設立していることが大きな特徴である。つまり教育理念よりも企業理念が最優先とされてる学校なのである。
 この学園の特色は、「6年間の全寮制により次世代のリーダーの育成、将来の日本を牽引する人材の育成するために、リーダーシップを発揮する上で欠かせない社会性や道徳心を養うこと」だという。
 一見、素晴らしいことのように思えるが、この学校は男性に限る、いわゆる男子校であって、女性は排除される。要するに女性は将来の日本を牽引するリーダーとは、まったく想定していないことは明らかである。
 またある情報によれば、海陽学園に入るための入学金や入寮費は60万円、年間の学費は約240万円、在学中の食費約40万円などがかかり、1年間で約300万円、6年間で1800万円が必要だというから、よほどの富裕層でなければ子どもを海陽学園に入学させることなどできるはずもない。
 従って、富裕層の家庭の男子が入学することになる。
 トヨタ自動車のイメージする日本のリーダーというのは、つまるところ富裕層出身男性ということであるから、その限界は自ずと分かるし、ましてや今後女性の役員や幹部が輩出されるはずはないだろうと予想することも簡単である。