最近テレビをみていると、日本という国がとても素晴らしい国だという感じの番組が多くなっている。たしかに、その番組の中では、日本の柔道は素晴らしい、日本人の作ったラーメンは美味しい、日本では忘れ物をしても警察に届けてくれる親切な国だ、道路にゴミが落ちていない清潔な国だ、などなどいろいろ日本の長所が紹介されている。
 でも日本って、世界一立派な国ではないとおもうし、そもそも日本人は日本のことをもっと知らないといけないのではないかと思う。
 今まで、世界のジェンダー不平等ランキングなどみてきたが、もっとたくさん世界ランキングがあるだろうし、またランキングできないが日本には先進国にはない遅れた法律もあるので少し見てみたいと思う。
 日本の貧困については、「相対的貧困」という世界ランキングがある。
 その前に、日本の状況をみてみよう。
 厚生労働省は2015年(平成27年)12月に「相対的貧困率に関する調査分析結果について」という文書を発表したが、その中で「相対的貧困」について説明している。
 また平成29年の白書でも相対的貧困率を発表した。
 「相対的貧困率」とは、「一定基準(貧困線)を下回る等価可処分所得しか得ていない者の割合」、「貧困線」とは、「等価可処分所得の中央値の半分の額」をいうとされ、 「等価可処分所得」とは、「世帯の可処分所得(収入から税金、社会保険料などを除いた手取収入)を世帯人員の平方根で割って調整した所得」とされている。この考え方はOECDの基準だという。
 そして気になる貧困線の具体的数字についてみると、2015年の全国消費実態調査の貧困線は135万円(2009年)、国民生活基礎調査の貧困線は122万円(2012年)という。この122万円というのは中央値の半分なので、逆に中央値はその倍の245万円ということになる。1年間の可処分所得が245万円ということ自体、低いと思われるが、さらにその半分の122万円、つまり月10万円で生活することは非常に苦しい生活だと言わざるをえない。
 なお、このように2つの調査があるが、それは主管する部署が、全国消費実態調査については総務省が行い、国民生活基礎調査については厚労省が行っていることから、調査目的、調査項目、調査対象、調査方法、調査頻度などが違っているためである。
 ところで国民生活基礎調査は3年毎におこなわれているので、貧困率の推移を見てみる。

 1985年 12,0%
 1988年 13,2%
 1991年 13,5%
 1994年 13,8% (但し、兵庫県を除く)
 1997年 14,6%
 2000年 15,3%
 2003年 14,9%
 2006年 15,7%
 2009年 15,0%
 2012年 16,1%
 2015年 15,7% (但し、熊本県を除く)

 この推移をみると、相対的貧困率は増加していると言わざるを得ない。全体として日本人は貧しくなっているのだ、そして日本の全世帯の15~16%の家庭が、年間122万円以下で生活しているということである。
 ところで、このように貧困率が高くなった家庭ないし世帯はどのようなものかについて、つまり世帯の属性について、厚労省は世帯を4つに分類している。そのうち一番貧困率が高いのは「17歳以下の子供のいる現役世帯のうち大人が1人の世帯」であり、その世帯の貧困率はなんと50,8%に及ぶ。なお、「現役世帯」とは世帯主の大人が18歳以上65歳未満の世帯をいうとされている。この世帯の貧困率の推移は次のとおりである。

 1985年 54,5%
 1988年 51,4%
 1991年 50,1%
 1994年 53,5%
 1997年 63,1%
 2000年 58,2%
 2003年 58,7%
 2006年 54,3%
 2009年 50,4%
 2012年 54,6%
 2015年 50,8%

 このように「子供と大人1人の世帯」の貧困率は30年以上もほぼ50%を超えたままで推移しており、まったく改善されていないことが分かる。
 ところで、この調査は「17歳以下の子供と大人1人の世帯」としか記載がなく、その大人が女性か男性かについては触れていない。
そこで少し古いが2012年(平成24年)における国民生活基礎調査をみると、母子世帯は82,1万、父子世帯が9,1万世帯ということだった。つまり「子供と大人一人世帯」のうち母子世帯は90%、父子世帯は10%だった。圧倒的に母子世帯が多いことがわかる。この事実は女性と男性の賃金収入の格差が大きく反映していることを意味する。
 実際、この2012年(平成24年)の調査の前提になった2010年(平成22年)の民間給与実態統計調査によると、次のようになっている。

(左側数値:母子世帯  右側数値:父子世帯)
 就業率 80,6% 91,3%
 非正規雇用率 57,0% 12,9%
 平均年間就労収入 181万円 360万円
 正規雇用 270万円 426万円
 非正規収入 125万円 175万円

 つまり母子世帯のうち特に母親が非正規労働者である場合には、年間収入が125万円であることが分かるが、おそらくこの貧困率は、上記のとおり過去30年間まったく改善されていなかったと思われる。
 先に労働力調査について書いたことがあるが、総務庁の労働力調査によれば、1988年の女子雇用者は1635万人、うち短時間雇用者は386万人で23,6%だったが、2017年の女性労働者2589万人のうち非正規労働者は1451万人なので、なんと56%に増えたのである。このように女性の非正規雇用の割合が倍になっていることから、母子家庭の貧困率は改善するどころか、増加しているのではないかと思われる。

 では相対的貧困率の世界ランキングはどうか。
 2016年のランキングをみると、先進7ヵ国では日本は2位だった。ありがたくない地位である。

 1位 アメリカ 17,8%
 2位 日本 15,7%
 3位 イタリア 13,7%
 4位 カナダ 12,4%
 5位 イギリス 11,1%
 6位 ドイツ 10,4%
 7位 フランス 8,3%

 ちなみに、スウェーデン9,10%、ノルウェー8,20%、フィンランド5,80%、デンマーク5,50%という低さであった。
 日本政府は、日本国民が、そして母子家庭がこのような高い貧困率であることを改善しようと思っているのか、まったく心許ない。