第1,法定利率

 1,現行法

 民法第404条
  利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は年5分とする。

2,改正法

民法404条

 1項 利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率はその利息が生じた最初の時点における法定利率による。
 2項 法定利率は、年3パーセントとする。
 3項 前項の規定にかかわらず、法定利率は法務省令で定めるところにより、3年を1期とし、1期ごとに次項の規定により変更するものとする。
 4項 各期における法定利率は、この項に規定により法定利率に変動があった期のうち直近のものにおける基準割合と当期における基準割合との差に相当する割合を直近変動期における法定利率に加算又は減算した割合とする。

3,改正のポイント

 ① 法定利率の引き下げ
  市中金利に併せ、法定利率と大きな乖離が発生することを防止した。
  そのため、合理的な変動の仕組みをあらかじめ法律で定め予測可能性を高めた。
  その際、穏やかな利率変動制の導入し、3年ごとの法定利率見直しとした。

 ② 商事法定利率の廃止
  商法514条「商行為によって生じた債権に関しては法定利率は年6分とする」との条文は削除された。
  よって商行為によるものであろうと否と同じ利率になった。

 ③ 遅延損害金と法定利率に影響
  民法419条が改正され、次のとおりになった。
  1項 金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。

 ④ 中間利息控除の扱い
  交通事故などの不法行為等による損害賠償請求は、将来の逸失利益を含めて事故時から請求が可能である。
  中間利息控除は、不法行為による損害賠償において死亡被害者の逸失利益を算定するにあたり、将来得たであろう収入から運用益を控除することである。
  最高裁判決では、この控除の割合は法定利率によるとされた。

民法722条

 1項 第417条及び第417条の2の規定は、不法行為による損害賠償においても準用する。

民法417条の2

 1項 将来において取得すべき利益についての損害賠償の額を定める場合において、その利益を取得すべき時までの利息相当額を控除するときは、その損害賠償の請求権が生じた時点における法定利率により、これをする。
 死亡による逸失利益は、「基礎収入額×(1-生活費控除率)×就労可能日数における中間利息控除の計数値」で算出する。
  例)24歳、独身の大学卒男性、年収600万円、
    生活費控除率は50パーセント。
    就労可能な年齢を67歳とすると就労可能年数は43年
 中間利息控除には、ライプニッツ係数、新ホフマン係数などがあるが、従来、いずれも、その算定にあたり法定利率の5%を前提にしていた。今回の民法改正により3%になったので、その金額も大きく変化する。なお、名古屋地裁では近年ライプニッツ係数が用いられている。
 死亡年齢24歳のライプニッツ係数について年5%の場合、年3%の場合を出す。
   a 600万円×(1-0,5)×17,546=5263万8000円
   b 600万円×(1-0,5)×23,982=7194万6000円
 なお、死亡時から完済時まで5年係った場合には5年分の遅延損害金が付くが、年5%の場合、年3%の場合ではどうなるか。
  a 5263万8000円×(0,05×5)=1315万9500円
  b 7194万6000円×(0,03×5)=1079万1900円
 このように中間利息控除においては、逸失利益は利率の引き下げにより増額するが、遅延損害金が減少する。