1.はじめに~統計からみる結婚観
昔から、「婚姻制度(結婚制度)は不要である」という意見があったが、あまりにも現実離れしていたので、長い間、この意見は無視されていたようだ。
しかし、日本の現実をみると、「将来も結婚する予定はない」などと考える若者が増えているようで、統計上もこの傾向は明らかになっている。
少し古いが、例えば2020年国勢調査による生涯未婚率をみると、男性は28.25%、女性は17.81%だった。ちなみに1960年時の未婚率は、男性1.26%、女性1.88%と言う状況で『国民皆婚時代』と言われていた。このように比較すると隔世の感がある。
ちなみに、「生涯未婚率」とは、「45歳~49歳」と「50歳~54歳」の未婚率の平均値から、50歳時の未婚率を算出したものであるという。
この未婚率を年令別で区分すると、男性の「25歳~29歳」の未婚率は72.9%、「30歳~34歳」の未婚率は47.4%であり、女性については「25歳~29歳」の未婚率は62.4%、「30歳~34歳」の未婚率は35.3%となっており、男性の未婚率は女性のそれよりも高い。
研究者の間では、このまま推移すると2030年には男性の3人に1人、女性の4人に1人が生涯未婚者になると言われている。
なお、婚姻率を見ると、1970年頃は10.0%(100万件)だったが、以後下がりはじめ、2022年には4.1%(50万件)と激減している。
ところで2017年の未婚率の統計から収入別のものを算出した結果も発表されているが、これによると、男性については収入の増加に伴って未婚率は減少する、つまり低収入ほど未婚率が高いが、これに対して、女性については収入の増加に伴い未婚率は増加していた。おそらく女性は経済的に自立することができれば、結婚などで夫に縛られたくないという思いだろうと想像する。
また、この統計も少し古いが、結婚しない理由の調査が2015年になされた。これによると、第1位は「適当な相手に巡り会わないから」、第2位は「独身の自由さや気楽さを失いたくないから」、第3位は「経済的に余裕がないから」、第4位は「結婚する必要を感じないから」と続く。
この調査はフランスやドイツ、スウェーデンとの国際比較もなされているので、興味深いが、第2位となった「独身の自由さや気楽さを失いたくないから」という理由はダントツに日本が多かった。ちなみにスウェーデンでは、第1位は「結婚する必要を感じないから」、第2位は「同棲のままで十分だから」、第3位は「適当な相手に巡り会わないから」、第4位は「今は仕事(又は学業)に打ち込みたいから」という。
つまり日本では、多くの人が、「結婚はお互いを縛りあう窮屈なものだ」と認識しているのであろう。 「婚姻制度は、なぜできたのだろう」、と過去に遡って考えた。